
JA大井川はみかん産地の維持発展とさらなるブランド化を目指して「みかんパワーアッププロジェクト」を始動。このプロジェクトの一環で、労働力支援と関係人口の創出を目的に、みかん収穫の援農活動を受け入れています。この日は、本活動の趣旨に賛同したJAバンクのイメージキャラクターを務める松下奈緒さん、岡部中学校の1年生、農林中央金庫奥和登理事長様、株式会社岡三証券グループ新芝宏之社長様が合同で援農活動を実施しました。
この取組みを通じたそれぞれの想いを援農受入側のJA大井川杉山芳浩組合長、志太榛原農林事務所中村友之所長、JA大井川柑橘部会長田隆俊部会長、援農受入れ農家の大畑さんとともに語り合いました。
(ファシリテーター:農林中央金庫 太田 明宏 氏)
以下「名字のみ(敬称略)」
(太田)松下さん、昨年に続き今回2回目の援農参加。午前中の中学生との合同援農はいかがでしたか。
(松下)すごく楽しかったです!生徒の皆さんも時間とともに慣れてきて、休憩も取りたくないように感じられました。
(太田)松下さんは今年デビュー20周年でした。岡三証券様と農林中金は両社が同時に100周年を迎える際に合同での援農活動を始めました。
(新芝)
弊社からはこれまでにのべ約120人の社員が参加しています。証券業と農業は縁が遠いのですが、逆にそこに面白さを感じて応募者が毎回殺到します。
農林中金の奥理事長とは、かねてから次の100年に繋がる植樹のような共同事業をやりましょうといったビジネス上のご相談をさせてもらっていましたが、さきほど奇しくも本物の植樹を共に経験させていただくことになりました。
(奥)役職員が生産者の皆様がどんなご苦労をされているかを現地に行って肌で感じることは非常に大事。それは将来の仕事に必ず生きてきますので、この援農は息の長い取り組みにしていきたいと思います。受入れていただく農家の皆様には、ご迷惑になっていないかと心配していますが。
(長田)
今年はJA大井川の部会員の内7名がこの援農ボランティアを利用させていただいています。
収穫は短期集中型なものですから、JAが受け皿となり農協観光と農中を中心とするこの取り組みは大変うれしく、またありがたく感じています。
(太田)松下さん、あらためて皆さんが丹精込めて作られているこの静岡のミカンはどんなところが魅力でしょう。
(松下)まずやっぱりこの青島というミカン、味が美味しいですよね。味が濃いというか。品種もあるのでしょうが、この地形がもたらす恵みなのでしょうね。それから、色んな方達の想いと繋がりとで成り立っているところも魅力の1つではないでしょうか。将来を担う子達に、どんなご苦労があってミカンをいただけるのかや、農業を盛り上げたい大人の存在を肌で感じてもらうことは、とても素敵なことだと思います。
(奥)今の松下さんのコメントで思ったのですが、「援農」は「縁農」でもあるのでしょうね。
(大畑)それはいい!今後は「縁農」で統一しましょうか笑。
(太田)一方で、我々は収穫という喜びの部分の一部のみお手伝いさせていただいているに過ぎないわけです。真夏の作業は想像以上に過酷なはずです。
(大畑)静岡もついに40度を超えてしまい作業ができない日も何日もありました。ミカンは待ってくれないから、隙を見て農薬散布や摘果をやりましたが。
(杉山)
営農の取組みとして、ドローン防除などがミカンでも運用できないか研究をしています。
JAとしても新しい技術を使いながら、さきほどお褒めいただいたこの静岡の蜜柑を組合員の皆様とともに守っていけたらと思っています。
(太田)昨年から「ミカンパワーアッププロジェクト」というものをスタートされています。どういった取組みでしょうか。
(杉山)酷暑や高齢化もあって10年前からミカンの生産者は半数に減っています。この地域は長らくミカンの産地として頑張ってきましたが、工夫をしていかないと皆様に届けることができなくなります。プロジェクトの成果はこれからですが、もう一度しっかりミカンを届けていく、生産量を増やしていきたいという想いから立ち上げました。
(太田)本日は静岡県から志太榛原農林事務所の中村友之所長にJA援農支援隊の一員としてご活動いただきました。柑橘の担い手について、県としてどのように向きあっておられるのでしょうか。
(中村)さきほど皆さんと一緒に植樹を行いました。これらは世代をわたって繋げてきたものです。
人がもつ技術、夏の暑さを乗り切る方法、そうしたものを持ち寄って皆さんに美味しいミカンを届けていく。
まずは一緒に知恵を出し合おうよと、日頃から事務所内でも話をしています。
(太田)長田部会長、JAや県へのご期待がありましたら、是非お話ください。
(長田)経営を安定させるには新しい品種を入れて価値を高めていくということなのですが、工夫にも限界があります。円安が進行して、農薬や生産資材が非常に値上がりしています。消費者も物価高で、ミカン一袋に払える金額というものは自ずと決まってしまう。一方で、天候によって農産物価格が高騰するということは起きてしまう。農林中金などの全国連に一番お願いしたいことは、農産物の価格というものは受給と物価高のなかでのコストが掛かって決まっている。何十年もの間、同じ価格帯を保つことは難しいということをもっと消費者に分かるように発信してほしいということですかね。
(杉山)生産の現場を皆さんに理解してもらうということも必要な取り組みだと思っています。援農は、農業の現場や農家のご苦労を見て知ってもらう最良の機会だと思いますので、JAとしてもこうした機会を積極的に活用していきたいと思います。正直、受け入れを始めたときは、これほど多くの皆さんに来てもらえるとは思っていませんでした。この地域の農業を知っている方がこれだけ増えていくということは、さきほどの「縁」を強くしながら地産地消や国産国消を理解いただくということ。そして、それに見合う金額を支払って経済を回すことに繋がっていくということだと思います。
(奥)今の組合長のお話に全て集約されているように思いますね。
消費者と生産者の利害が対立していてはダメで、今の価格のままでは日本の農産物は採れなくなるのだという危機感を共有する必要がある。そのためにも、消費者も生産者と同じ空気を吸って、農作業の大変さと日本で生産することの大切さを、経験を通して理解する。その結果、モノの値段が折り合うようになることが大切です。こうしたことは、松下さんがTVで折に触れて発信していただけると思いますから笑。
(松下)援農参加を通じて、生産者の皆様の気持ちと消費者の気持ちも両方分かってきているように思います。ですから、私が援農のお手伝いができることが、何かのきっかけになれば嬉しい。なぜ美味しいのか、なぜこの値段なのかといったことを伝える掛け橋になれたら嬉しく思います。
(太田)直売所のヘビーユーザーとして是非よろしくお願いします。
(大畑)本当に皆さんありがとうございます。今まで色々な方が来てくれて色々な話を伺うことができて、楽しくやらせてもらっています。4年前までは妻と2人でやっていたことが信じられません。当時は大晦日までかかっていましたから。それが今はクリスマス前に終わってしまう。我々も暑さに負けずに頑張りますから、是非、これからも長くこの事業を続けていただけると嬉しいですね。