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もの言わぬ ものに ものを言わせる ものづくり

革新的な発想で地域の茶業を牽引してきたとして、藤枝市で有機茶を生産する向島和詞さんが中日新聞主催の「第85回中日農業賞」で最高位の農林水産大臣賞を受賞しました。向島さんは「自分のやりたいことを追求し、関係者のみなさんと協力してきた結果」と静かに喜びを語ります。

先代の急逝により、若くして就農した向島さんの経営の根幹にあることの一つに、末端の従事者まで持続可能な収入を確保するという明確な理念があります。原価積み上げ方式で価格を設定し、品質の根拠をドラマチックに丁寧に説明することで顧客の理解を得ます。「良いもの」とは過度な品質ではなく、用途に最適化された“ちょうど良い品質だと定義し、無理のない生産と販売を貫いてきました。また、その仕事がどう社会的意義に繋がるかを考え顧客に伴走してもらうスタイルを通してきました。

栽培面では、自然条件を最大限にいかす柔軟な発想が光ります。被覆を行わない「はだかてん茶」の開発はその象徴で、国内外向け粉茶として新たな市場を切り開きました。凍霜害の年には、はだかてん茶の販売を上手く活用して被覆を避けて樹勢回復を優先するなど、気象条件に応じて生産方法を切り替える判断力も高く評価されています。

また、生産者との協働にも力を注ぎ、事前に単価を提示したうえで売れ行きに関わらず買い取る仕組みを整備。予定以上の利益が出た場合には、さらに提示した金額に上乗せするなど、生産者に対しての還元を強固に行ってきました。年間生産量の1.5~2倍以上の販売先を確保するなど、リスクに備えた経営で地域の仲間を支えてきました。さらに、独立を目指す若手の育成にも取り組み、これまでに数名が地域で新たな担い手として活躍しています。

「お茶がマジで好き!」という純粋な思いを原動力に、地域とともに歩んできた向島さん。その姿勢は、これからの茶業の未来を考えるうえで大きなヒントを与えてくれます。

 

藤枝市瀬戸ノ谷 向島和詞さん 広報誌2026.5月号掲載